T組織修復剤、組織修復剤の使用方法およびスクリーニング方法 概要 本発明が解決しようとする課題は、サイトカインストームに関わる複数のサイトカインを抑制でき、かつサイトカインストームで損傷した組織を修復できる組織修復剤を提供することである。 <SOD3とサイトカインストームの関係> 高齢者の肺ではSOD3が少ない状態となっており、このことがサイトカインストームに由来するCOVID-19の重症化に関連することが示唆されている <本発明における新たな知見> 本発明者は、特定の間葉系幹細胞の培養上清に由来するエクソソーム等の微小粒子が細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(SOD3)を多量に含み、かつ高いSOD活性を示すことを見出した。 そして、この微小粒子そのものがLPS投与により誘導されたサイトカインストームにおける炎症性サイトカイン等を直接的に抑えるだけでなく、この微小粒子に含まれるSOD3がサイトカインの中でもIFNγおよびTNFαの存在下で損傷した組織の修復を進めるという、相乗効果を奏することを見出した。 これまで、エクソソーム中にSOD3タンパク質が存在することは知られていた。しかし、特定の間葉系幹細胞の培養上清に由来するエクソソームのSOD3活性が非常に高く、サイトカインストームにより損傷した組織を修復できる有効量以上含むことは、本発明者が初めて見出した知見である。この知見がなければ、サイトカインストームに関わるサイトカインを抑制でき、かつサイトカインストームで損傷した組織を修復できる組織修復剤を想到することはできないため、本発明の組織修復剤は従来のサイトカインストーム抑制剤とは全く作用機序が異なるものである。 さらにSOD3が少ない高齢者(非特許文献6;ANTIOXIDANTS & REDOX SIGNALING(2020)、 33、 2)は、SOD3が少ないためにサイトカインを抑制しただけでは組織の修復ができないことが予想されるが、本発明によれば高齢者のサイトカインストームで損傷した組織を顕著に修復できる。 上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、特定の間葉系幹細胞の培養上清に由来するエクソソーム等の微小粒子が細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(SOD3)を含み、かつ高いSOD活性を示すことを見出した。そして、本発明者らは、この微小粒子を用いることにより、サイトカインストームに関わる複数のサイトカインを顕著に抑制できることを見出した。